#35「あの子」は友達？

ココアといえば、青山美智子さんのデビュー作、小さな喫茶店「マーブル・カフェ」の一杯のココアから始まる12編の連作短編集『木曜日にはココアを』。まだ読めていないのですが個人的なウエイティングリストに入っている気になる1冊です。ほっこりとした優しい気持ちになれると評判。

さて、今週のテーマは「友情」です。

特にこれといってこのテーマを選んだ理由があるわけではないのですが、最近、自分のやりたいことを見返りなしで手伝ってくれたり、応援してくれたりする機会が何度かあって、「交換」なしで関われることってすごく、なんていうかありがたいなって思ったんですよね。でも、「友情」ともまた違う形のような気もしていたり...友情ってなんだろう？

友情を描いた本はたくさんあるけれど、今回は本棚を眺めてパッと目に入った、柚木麻子さんの『王妃の帰還』をご紹介したいと思います。

物語の舞台はカトリック系の女子校中等部2年。主人公の範子ことノリスケは、クラスでは仲間3人となるべく目立たぬように、静かに楽しく暮らしていた。しかし、事件は起きる。クラスの女王だった滝沢さんが、トップから陥落し、なんとノリスケたちのグループにやってくる！しかし、滝沢さんとの「文化の違い」にノリスケたちは困り果て、自分たちの平穏を取り戻すためにある作戦に出るが...

というお話。リアルな固有名詞が散りばめられて、どこかで見てきた風景とカチッと重なるのは「女子描き力」の高い柚木麻子さんの成せる技。

テイストが少しコミカルでキャラクターもいい意味で大げさな感じが物語のテンポを感じさせてくれて楽しめます。気楽に読める、けれど、裏には壮大な歴史との繋がりも。

柚木麻子さんは刊行記念インタビューでこんな風に語っていました。

クラスの中の少女たちの関係性はオセロのようにパタパタと入れ替わっていく。最後、滝沢さんとの関係はどうなっていくのかな...？「友達」ってなんだろう？

終わり方も清々しくてとっても好きな作品です✌️

その名前を知ったのは、村上春樹さんとの共著『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』からでした。直球だな、タイトル。と思いつつ。

そこから、いくつか河合隼雄さんの本を読んだ中で、私が好きな本が『大人の友情』です。友情も、いろいろな観点から語れるものだと目次を眺めて思います。特に、「大人の」にフォーカスしたものは、あんまり見ないような気がしますね。

よく、「ほんとうの自分」という言葉がアイデンティティの話をするときに出てきますが、これと同じように「ほんとうの友達」という風に「ほんとうの」という枕詞を使われることがあります。ほんとうの、ってなんでしょう。

本の中に、こんな一文がありました。

表現が強いな、と感じた方がいたらごめんなさい。ですが、ここで言いたいのは、「なんか状況的に良くないことをしたな」というときに、自分を頼ってやってきた友人にどういう風に接するか、という話なんだと思います。（実際に本文でも仮の話として書かれています）

その対応に正解とかはないんですけれども、問いとして考えてみる価値はありそうな気がしたので引用しました。

これを書いていたら、なんとなく、奥田英朗さんの『ナオミとカナコ』を思い出しました。友達のふたりはカナコに暴力を振るう夫を殺害することを企て...というサスペンスな話なんですが、ある意味これも友情の話と言えるかもしれません。

この他にも「男女間に友情は成立するか」「友人の出世を喜べるか」「裏切り」など、大人の友情における色々なテーマで語られています。ひとつひとつは短いのでササっと読むことができます。

夏目漱石の作品にはよく好きな人がかぶって友情との間に揺れるパターンが出てきますし、他の作品でもあるあるですが、これは昔からの永遠のテーマかもしれません🤔

ということで、今回はいつもよりちょっと短いですが、この辺で👋
来週も、みなさんにとって楽しい1週間になりますように。

▼いつも感想や励ましのメッセージありがとうございます。良ければ気軽に送ってください😌めちゃくちゃ励みになっています！

前回の「ぶつかっちゃダメです、かわすんです」の回はたくさんのメッセージありがとうございました！（このテーマを送っていいものか迷いつつも、送り出してよかった）頂いたメッセージ見ながら、私もすごく考えさせられました。

▼「本好きのための鞄」はいろいろ準備が間に合ってなくて、お披露目はもう少し先になりそうですが、気になってくださっている方がいらっしゃって嬉しいです。

「本と必要最低限のものしか入らない」という仕様が、逆に贅沢な読む時間をつくる思って作っています☺️