【エッセイ、漫画、小説の3本】積読は宝の山 💎
世界に目を凝らした人が見た世界、『平熱のまま、この世界に熱狂したい』
地政学×漫画があたらしい、『紛争でしたら八田まで』
スパイたちの頭脳戦を楽しむ、『ジョーカー・ゲーム』
📍一番下にイベント(東京)お知らせありです
5月も残すところ1週間となりました。30℃近い日もあれば、突然の雨の日もあり、お天気は少し不安定気味でしたが、いかがお過ごしでしたか?(どうやら梅雨入りしたようです!)
今週は仕事のヤマがあって、それが終わった夜、ひとりご褒美に出かけました。いつもは通らない道を通って、珍しくバスも活用してついた先には、高い天井までに本が並んだブックカフェ。
大通りから一つ後ろなので辺りは暗めな分、街灯りにもなっていました。

東京・日本橋浜町にある「HamaHouse」。カレー美味しい!
お店で読書とビールのキャンペーンをしていたので「#読書と乾杯 セット」を頼み、読みはじめたばかりのエッセイを満喫したのでした。
世界に目を凝らした人が見た世界
その時読んでいた本は、文芸評論家の書いた本なのですが、これがまた面白くて。まず、タイトルがいい。そしてエピソードの「目のつけどころ」が興味深くて、シリアスなところもポップなところも融合したような作品です。
はじめに「面白い」、というか「そういうことってあるな」と思ったのは、著者の方が電車で遭遇した出来事の話。
車内は満席で数人が立っているくらいの混雑具合。熱心に塾の教材であろうドリルを見ていた小学生の男の子が何かに気づいたように突然席を立ってドアの横のスペースに移動し、空いた席には80代くらいと思われるおばあさんが座りました。
周囲の大人たちを少しハッとさせ、微笑ましいような場面です。おばあさんは2駅目で席を立って、男の子に「譲ってくれてありがとうね」と声をかけました。すると、男の子は「乗り過ごさないように3駅前の駅で立ちなさいとお母さんに言われているから」とそっけなく答えてドリルに視線を戻した、といいます。
「う〜む。そういうことか。」と目を開きながら、さすがは文芸評論家、その出来事を『宇治拾遺物語』に似た物語があったなあ、と思い出します。
『宇治拾遺物語』に「田舎の児、桜の散るを見て泣くこと」という編があるのですが、これは桜散る様子を見て涙している子どもに僧侶が「桜は儚いものだから」と声をかけると「桜が散るのは気になりません。父が作っている麦の花がこの風で散って実らないのが辛いのです」といわれ、僧侶はがっかりした、という話です。

この「目に見えた優しさや趣深さは自分の想像と違ったものだった」ということについて、何日も思考も巡らせることになった著者は、悩みながらも一定の自分の考えに至ることになります。
世界に目を凝らした人だけが見つけた、見過ごしてしまいそうな日々にある「答えのないこと」について考える、ということに多くを割いているような著者の暮らしを読んでいると、どことなく落ち着いた気持ちになります。
「遅くて、遠くて、時間がかかる」なんて現代では「勿体無い」と言われそうなことには、それでしかなし得ない何かがあるのかもなあ、と思いながら読んだのでした。
タイトルが素敵なその本は、文芸評論家の宮崎智之さんの『平熱のまま、この世界に熱狂したい』です。気になったら、ぜひ。増補新版の文庫も出ています。

地政学×漫画があたらしい
落ち着いた気持ちになるエッセイの後には、情報量と密度がたっぷり含まれた、「紛争解決」で世界を駆け巡る主人公が登場する漫画、その名も『紛争でしたら八田まで』を紹介します。
"地政リスクコンサルタント"と名乗る若者・八田百合が地政学をはじめ、現地の言語や歴史、宗教、政治、経済、軍事、また文化など、様々な知識を活かして、民族や言語、思想などの違いによる世界中の多様な事件や紛争を解決するために交渉を行う物語。2019年に連載開始をして、今も続いています。単行本は現在17巻。