#77 ランチのあとに、本とコーヒー。

・美味しい時間は忘れさせて / 『ランチ酒』
・本とコーヒー、嗜好品同盟 / 『本屋という仕事』
Akane 2022.09.04
誰でも

このレターは、毎週日曜の夜にお届けしているものの、読む時間はそれぞれ。

なので、「こんばんは」というのもどうかな、と思い、特定の言葉を設けてなかったのですが、毎回書き出しの挨拶を迷って時間が経つ、というのを、もはや習慣化して77回目のレターまでやってきました。

関係ないですが、これは図書館に本を返しにいく人(私)の影です。

関係ないですが、これは図書館に本を返しにいく人(私)の影です。


迷う、というのは、一般的にはそんなに前向きな言葉として登場しませんが、私は結構好きなんです。

そう思うのは、幅のなかで揺れながら定めていく過程が面白いと思うからかもしれません。(むかしは効率や答えを求めて走っていた時もあったなぁ...)

小説とかって、いい意味でパキッとしてないことが多いじゃないですか。あーでもなくて、こーでもなくて、はっきりとした物言いも多いわけでもなくて、だいたい登場人物たちも迷っていて、その時の自分の状況を重ねて一緒に迷ったりして、あぁ楽しい。

正しいとか、正しくないとかだけじゃなくて、一緒に未完成や途中の道をふらふらできる人でいれたらな、と思ったりする最近です。


ということで、はじまりから謎な雑談ですみません( ⚆ ⚆ )💦 

今日は、「ランチのあとに本とコーヒー」的な感じで進めてまいります。最後までご一緒できたらうれしいです。

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美味しい時間は忘れさせて

自分も面白く読んだし、贈った方にも楽しんでもらえた本、『ランチ酒』

『三千円の使いかた』で知られる、原田ひ香さんの作品です。ちなみに『三千円の使いかた』は「文庫の壁」と言われる50万部を超える、ベストセラー。版元の中公文庫では、この売れっぷりを"事件"とも呼んだそう...

で、話を戻して『ランチ酒』です。

主人公の犬森祥子はバツイチ、アラサー、愛娘は、別れた夫一家が育てている。昔馴染みの亀山の営む何でも屋的な店で「見守り屋」をしながら暮らしている。夜から朝にかけての見守り業を終え、ランチ営業の酒と食を探すのが祥子の日課。

不安定な暮らしと、気掛かりな愛娘。「このままでいいのか」という焦りを携えながら、それでも束の間、不安を忘れられる時間が、晩酌ならぬ、美味しい「ランチ酒」。

1冊の中で16のランチ酒を一緒に楽しめるのですが、いろいろな店を開拓していくに連れ、祥子の過去や、「見守り」を使う人々の事情を垣間見て、ちょっぴりこころがギュッとなる。

祥子の食前、食中、食後を注意深く眺めていると、面白いんですよ。ランチ酒のお店は実在するお店なので、ついつい探してみたくなってしまいます。(東京が多いのですが)

現在シリーズ3巻出ているので、気に入ったら続編を「おかわり」できます✌️✨

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本とコーヒー、嗜好品同盟

長らくお世話になっている先輩が、私のために選んでくれた本は、思わぬ新しい発見をくれました。

梅田 蔦屋書店の人文コンシェルジュでもあり、本にまつわる様々な活動をされている三砂慶明(みさご よしあき)さんの著書、『本屋という仕事』は、シンプルなタイトルの中にある、中身の深さがすごかったです。なんというか、潜水感。

簡単にいうと、コロナ禍で本屋、書店員という仕事を見つめ直していた三砂さんが、移ろいやすい現代社会において「本屋は何を問われているのか?」ということの答えを探すために、目的や立場や色の異なる本屋さんのリアルな言葉をまとめている本です。

本屋の本、って正直なところ、本や本屋が好きな人しか読まないと思うのですよね。これは、物語が好きな人とも、また少しだけ違う気がしています。


この本の中で、印象的だったのが、3人の本屋店主さんの対談の記録です。

「完璧な本」というお題でお話をされていた場面があって、店主さんのおひとりが、こんなふうに仰っていました。

いい本とか、おいしいコーヒーって、大きく分けて大体三つの基準が挙げられます。
まずひとつは主観ですよね。(中略)その人がおいしいと思えばそれでいい。

(完璧と言われるアルゴリズムで本を作って、完璧なマーケティングに基づいて売ったとしたら ※ Akane追記)そうなるともう本自体が貨幣になっちゃうわけで、それはもう文化じゃないわけです。

でも、本っていうのはそういう絶対値がないし、いろんなコミュニティーの合意形成とか、自分が美意識を磨いて、良し悪しを決めていけるんです。だからインディーだし、絶対資本に収奪されない存在、それが本屋コーヒーのような嗜好品の良さなんです。
『本屋という仕事』p.96

なんか、「本を読みながらコーヒーを飲む」ってどことなく私の中でセットだったんですが、この対談を読んで、実はめちゃくちゃ根底のところで繋がっているんじゃないかと思いました。

こんなふうに、興味深い考察や、本屋としての矜持だったり、苦労だったり、それでも続ける理由だったり、本のすぐ先にある、でも、知らなかった世界を見せてくれます。


変わりゆくこの業界を静かに支え動かそうとしている人たちの言葉は、「本」「本屋」という部分を差し引いても、一度話を聞いて(というか読んで)おくと、何か迷った時の灯りになりそうな気がします。

と、たくさんの方に読んでもらいたくて書いたけれど、やっぱり「本屋さん」が好きなひと向け!

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・新書の絶滅を危惧した講談社現断新書が「100ページだけの新しい新書(!)」で、"さぁ、勝負だ!"

・ふと「背表紙の色」の決め方に疑問に思って呟いた読者に講談社文庫が回答。その決め方、面白い...!

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読書泊トートを作っているという話を何週か前に書いていたのですが

「折れ防止の文庫本専用のエリア必須!一つじゃ足りぬ!」
「本を守れるしっかりした生地で!」
「単行本入れエリアも!」
「後から気づくと面白い仕掛けもしたい!」

などなどアイディアつめつめで作ったところ、出来上がったサンプルが鞄としては重すぎて、本を入れたら読書旅っていうか読書筋トレじゃん....状態となっていました( ⚆ ⚆ )💦

それも、細々改善を重ねて、だんだんといい感じに。中身は機能いっぱいで面白くできていると思います!

見た目&サイズ感はこのような感じ。メンズが白で、レディースが黒を持ってもいい感じです。素敵なモデルさんはお友達です。撮影協力してくれました←いつも人の優しさを頂きながらどうにかやっている

見た目&サイズ感はこのような感じ。メンズが白で、レディースが黒を持ってもいい感じです。素敵なモデルさんはお友達です。撮影協力してくれました←いつも人の優しさを頂きながらどうにかやっている

まだまだ直さないといけないところがあったり、実際に使って本当に使いやすいかの確認をしたりと、お披露目はもう少し先になるのですが、これを持って「読書泊をしてみようかな?」と思ってくださる方が一人でもいれば、それだけで私は頑張れます💪

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ということで、今回はこんなところで👋

9月もみなさんにとって楽しい1ヶ月になりますように!(お仕事が4月はじまりで半期の方とかは、多分上期締めとかなので忙しい人も多いかな?と思っています。どうぞ、ご無理はなさらずに)

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