#209 手が届かなくても手が届く本。

(読了目安:10分)
・本づくりの文化施設「本と活字館」に行ってきた(雑談)
・社会の時間、『ほんのちょっと当事者』
・手が届かなくても手が届く、『遠野物語』
Akane 2025.04.20
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今週末は私の住む東京では28℃にもなったようでした。春とは...!

そんな中、お手伝いをしている古書店ではスペインの聖名祝日で、本と花を贈る日「サンジョルディの日」にまつわるイベント「本と、花と、珈琲と。」が開催されました。ささやかな場でしたが、レターでもお伝えしていたので足を運んでもらえて嬉しかったです🌹

ご近所のお花屋さん、珈琲屋さんたちと集まって開催🌹☕️📚 私はZINEや古本やしおりなどを販売🔖 

ご近所のお花屋さん、珈琲屋さんたちと集まって開催🌹☕️📚 私はZINEや古本やしおりなどを販売🔖 

環境変化の多い時期ですが、4月も後半に入り、少しずつ落ち着いてきた頃でしょうか?

私はというと、先週からぼーっとに磨きがかかっております。

仕事仲間に資料を渡すついでにランチミーティングしようと約束するも、約束の時間を10分間違えて覚えており遅刻でやばい!とタクシーを捕まえてギリギリ滑り込む。「遅刻してはならぬ!」という気持ちで頭がいっぱいになり、肝心の資料を忘れてただのランチをして帰ることに。何をしに行ったんだ。(ちなみに元々行こうとしていたスリランカ料理屋さんはスリランカのお正月に合わせて帰省中で臨時休業だった)

のようなことが数件続き、落ち着け自分!!!という感じで生きております。


今日のレターはちょっと長めですが(10分くらい)、気になるところだけ読んでもらったり、時間がある時になど、自分のペースでどうぞです◎

***

本づくりの文化施設「本と活字館」に行ってきた

先日、東京・市ヶ谷にある「本と活字館」に行ってきました。ここは印刷大手の大日本印刷(DNP)さんが運営している、本づくりの文化施設です。駅からは少し遠いですが、個人的にはかなり楽しめる場所だったのでおすすめしたくて。

文字デザイン、活字の鋳造(金属を溶かして型に入れて文字型を作る)から、印刷、製本までのプロセスが展示されていて、印刷機や活版職人が作業する様子が、写真だけじゃなく映像や実物で動きを見ることができます。

文字選びの速さを画面の中の職人と対決できるデジタル展示があって、やってみると「職人はやぁ...」ってなります。カフェやワークショップもあり、今回は予約満了で参加できなかったけれどスタッフさんによるツアーもあったり。

建物自体はそこまで広くないんだけれど、みんなが楽しめて知的好奇心くすぐる素敵な施設なので、近くに来ることがある際は立ち寄るの、おすすめです!

印刷の様子。実際に動いている状態で見ることができる。結構大きい!

印刷の様子。実際に動いている状態で見ることができる。結構大きい!

駅から遠い分、周辺は緑が多くひらけていて「都会の真ん中っぽくないな」という感じ。夏目漱石、尾崎紅葉、泉鏡花、北原白秋などの文豪が愛したと言われる神楽坂までも近く、お散歩にも最適です👟

ちなみに、ちょっと話はそれますが、その後に、村上龍さんが司会を務める情報番組で大日本印刷が特集されていたのですが、その時に村上龍さんが「電車で紙の本、読んでる人いないですもんね」とコメントしていました。(ちなみにその番組で村上龍さんが「本を読まなくなった」とおっしゃっていてちょっと驚いた)

私は電車に乗る時は概ね本を読んでいることが多いけれど、確かに読んでいる人、あんまり見かけません。が、逆に見つけると嬉しいし、「何の本読んでいるのだろう」と気になっちゃいます。他人ですが、急に仲間意識。日本人の少ない海外で出会った日本人的な感じで。

個人的に電車読書で印象的だったのは、少しイカつめのお兄さんが瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』を読んで、ぐっと何かを堪える良い表情をしていたことですかね。

ちょうど、先週「電車で本を読んでいたら、同じ本の英語版を読んでいる人がいた」という話も教えてもらいました。それはなんか嬉しい感じ!

自分の周りに比較的本好きが多くて、そういった話を日常的にしていると、なんだかそれなりにいるように感じてしまうけれど、減っているのは事実なんですよね。自分の見えている世界(見たい世界)はバイアスが入ってるなぁとも思って、もう少し行動範囲を広げて色々な人の話を聞きたいなとも思ったでした。

***

社会の時間、『ほんのちょっと当事者』

「これ、学生の時に教えてもらえたら良かったのにな」と思うことがたまにあります。もちろん痛い思いしながら覚えていくことが必要な時もあるけれど、「自分ではどうしようもできない」ことや、「戻れないレベルにやばい」ことまで世の中にはあったりするので、そうならないために、そして万が一なってしまった時に福祉や社会の仕組みを知っておけると良いような気がしたのです。

ちょっと前置きが長くなっちゃいましたが、そう思ったのは、フリーのライター・青山ゆみこさんの社会派連載エッセイがまとまって一冊の本になった『ほんのちょっと当事者』(ミシマ社)を読んだからでした。

これまで「自分ではどうしようもできない」までになったことはないものの、意外と多くの社会の仕組み、特に、「実務的な」社会の仕組みをふんわりとしか知らずに長いこと生きてきてしまった気がします。

冒頭から始まるのは、青山さんが社会人になりたての頃の「カードローン地獄」の時の話。はじめからまあまあヘヴィ。

アパレルで働いていた青山さんは、社会人になって給与口座の開設をしたと同時に銀行で新社会人向けのお得なクレジットカードを勧められ、「いくつかの特典があって、もちろん使わなくてもOK」という形で気軽な気持ちでカードをつくります。

使うこともなく半年経った頃、秋冬ものが店頭に並び始め、素敵なコートに一目惚れ。諦めようとしたその時、ショップのお姉さんが「分割払いも可能ですし、なんならボーナス一括でも」と。

機能を理解していない青山さんは、話を聞いて「利子なく、今すぐコートを手に入れられて、支払いはボーナスまで先延ばしできる...まるで夢のようだ」と思ったところに「リボ払いなら定額返済なので月々の負担が軽いですよ」とも。(「ただ、ちょっと利子が高いけれど」という言葉はこの時点で青山さんには聞こえていない)

ここから青山さんのカード切りまくりの日々が始まる......

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  • 手が届かなくても手が届く、『遠野物語』

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