#31 本でお腹を満たしましょう 〜読食の秋〜

読書の秋 + 食欲の秋 = 読食の秋!

【目次】
・今日のテーマは「読食の秋」
 1. 食卓は家族の数だけある
 2. スコーンの湯気を食べる
 3. 夜を頬張る
・気になる読食メモ
・あとがき
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・サイドトーク
 1. 最高のサイコロを振るみたいに
 2. 何気ない言葉も、全部そのひとの
Akane 2021.09.26
誰でも

こんばんは(こんにちは)。Akaneです。なんだか涼しくなってきましたね。みなさま、最近は、何読んでいますか?👀

私は、世界観大きすぎて"この想像力は事件"とまで言われる、話題の中国SF小説『三体』を読んでいます。本を読むときに事前知識の有無が面白さを左右することがありますが、まさにそれで、いでよ物理の知識...って感じで読んでいます。(なくても、めちゃくちゃ面白いですよ!)

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さて、秋といえば「何の秋」ですか?私はもちろん「読書の秋」はありますが、「食欲の秋」でもありますね!ぶどうに栗にきのこに秋刀魚に...🤤

頂きもののお手詰め最中!箱が「実りの秋」って感じだね。トンボはアキアカネかな...

頂きもののお手詰め最中!箱が「実りの秋」って感じだね。トンボはアキアカネかな...

ということで、今日は本でお腹を満たす、「読食」をテーマにお届けしたいと思います。

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食卓は、家族の数だけある。

これ1冊目?って感じがするかもしれませんが、私にとって『そして、バトンは渡された』は、「ごはんを食べる」ことについてイチオシの本です。

秋の映画化を控え、本屋大賞も受賞していたので、ご存知の方もいるかとは思いますが、改めて。

作者の瀬尾まいこさんは、坊ちゃん文学賞で短編『卵の緒』でデビューした、元学校の先生。家族や青春をテーマに柔らかくて、温かくて、時に鼻の奥にツンとくるみたいな静かなこころの揺れを届けてくれる人気の作家さんです。

森宮優子、17歳。優子という名前はどんな苗字にでもまぁまぁ合致するいい名前だ、と優子は思う。そんなことを思うのには訳がある。

幼くして実の母親を亡くした優子には、父親が三人、母親が二人いる。家族の形態は、十七年間で七回も変わった。血縁のない大人たちが繋ぐ、優子を育てる「リレー」の物語。

ごはんの描写って、ごはんの描写そのものがいい、というよりは、ごはんを挟んだ空気の描写がいいってことなんだなぁ、って思うのです。私の好きな一文はこれ。

塞いでいるときも元気なときも、ごはんを作ってくれる人がいる。それは、どんな献立よりも力を与えてくれることかもしれない。

自分を育ててくれた家族と過ごせる時間って、思った以上に短いってことを知るのは、大人になってからなんですよね。

瀬尾さんの物語には大きなどんでん返しはなくて、日常が続いているような感じなんだけど、こころがどんでん返しするから、やめられない...

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スコーンの湯気を食べる

お友達が贈ってくれた、朝吹真理子さんの『だいちょうことばめぐり』は、"銀座のかおりをお届けする雑誌"「銀座百点」で連載されていた人気エッセイ。

例えば、同じ部屋に誰かと二人でいて別々の作業をしていたとする。しばらくしたら、相手が「あ、ねぇ、そういえばさ、全然関係ないんだけど」と突然思い出したように何かを話し始める。私は自分の作業の手を止めずに、耳を傾けて、ちょっとだけ微笑んでしまう。みたいな感じの本です。「聞いて!」感がなく、間の取り方が心地の良い一冊でした。


目次を見ると、気になる題名がチラホラ...

私は、「Cream Tea」という章がとっても好きだった。焼き上がりのスコーンを割った後の描写が最高すぎるので、ぜひお求めの方は220ページをご覧いただきたい。

ぱかっとスコーンを手で割る。ふわふわのなんだかなつかしいにおい。わあ、赤ちゃんのにおいがすると紗季子ちゃんがいった。なんてかわいい表現だろうか。
スコーンが、湯気ごとほおばるものだとはじめて知った。

ちなみに、朝吹真理子さんの作品は、これまで読んだことがなかったんですが、目次を眺め、2,3エッセイを読んだあとに、私は朝吹真理子さんの『きとこわ』を注文していました。(ちなみに、『きとこわ』は、第144回芥川龍之介賞受賞作です)

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夜を頬張る

古内一絵さんの『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』は、深夜にだけオープンするカフェを舞台に巡る連作短編集。

夜食カフェのオーナーは、意外や意外、元エリートサラリーマンのドラァグクイーンのシャールさん。背の高い、ピンクのボブウィッグ&厚化粧はなかなかの迫力。

でも、ここに集まるひとたちは、なんで来るのだろう?その答えは、読み終わるときにはしっくりきてしまう。

この本のなにがいいって、ちょっと知らないメニューが出てくるから、そのたびに画像を検索して、目で見てテンションがよりあがっていくこと。お腹すく🤤

夜食カフェとあって、からだに心にやさしいメニューがたくさん。

秋ニンジンと豆乳のポタージュ、トマトのゼリー、イチジクのバルサミコ酢ソース和え、オリーブのピュレ、水菜とアーモンドのじゃこ和え、ごぼうとグリーンアスパラガスのマリネ、ブロッコリーとパプリカの甘酢和え、山芋とアボカドの山葵和え、胡桃のロースト…

私も行きたいよ、マカン・マラン。と、思いながら、多くの人が本を閉じるのでした。多分。

シリーズ作品(4作)なので、ちょっと長らく楽しめそうですよ!

気になる読食メモ

私もまだ読んでいないのだけれど、「ほしい物リスト」もしくは「積読」となっている本たちはこちら。

・『私的読食録』(堀江敏幸 / 角田光代)
・『今日もごちそうさまでした』(角田光代)
・『いとしいたべもの』(森下典子)
・『食べ物連載 くいいじ』(安野モヨコ)
・『さんかく』(千早茜)

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あとがき

前回のあとがきで、「レターの長さどうですか?」というアンケートをとったら、「丁度いい(55%)」「少し物足りない(47%)」「ちょっと長い(3%)」でした。

ちょっと拮抗したので、メインの本の紹介は前回と同じくらいの長さにし、一番下にちょっとテンション深めのサイドトークを載せていきます。

今日はこの辺で、という方はこのあたりで、また来週お会いしましょう〜👋


少しずつ袖を長くしたり重ねる季節となってまいりました。気温の変化に体調など崩さぬように、来週もお過ごしくださいませ。
(来週どこかで"読むしかできないイベント"レポートを号外で出すので、もしよければご覧ください!ご参加くださった方々がお持ちくださった選書を紹介します📚)


一旦締めますが、まだまだ読めるよって方は、もう少しご一緒くださいませ!👇

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▼「読んだよ!」「気になる!」などの感想いつもありがとうございます。良ければ気軽に送ってください😌みなさんの感想が励みになっています!

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ここからはサイドトークです。

最高のサイコロを振るみたいに

ある時から、選書をする時に、その人が好きになりそうなものを選ぶのではなくて、私が読んで、好きすぎたものを選ぶようになりました。(もちろん、多少の好みや、その時その人が抱えている状況を配慮することは大事だけれど)

保守的な性格が相まって予定調和な毎日を過ごす自分に、「サイコロ振って出た目に進みたい」と思ったことがきっかけだったように思います。細かいことは端折りますが、自分のやったことないことで、やってみたいと思ったことを端からやり始めたら、出会うはずのなかった人に多くあって、そこから今までなかった道が開いた。隠し扉がそこにあったのか、っていうように。

本も、隠し扉を開ける人がいてもいいんじゃないか。自分は自分のコントロールができるようで、できないもので。意識に囚われた自分が外に出ることは思っている以上に難しくて案外どこぞの誰かがひょいと外に出してくれることがあるように思います。

ということで、私も、その「どこぞの誰か」になれたらと思いながら、今日も自分が好きすぎる本を差し出します。その人にとって最高のサイコロになるように。

何気ない言葉も、全部そのひとの

9/24,25に「読むしかできない」という予約制の読書イベントを開催しました。ご参加くださった方の中には、SNSで繋がっていた方もいて、その方々の日頃の言葉を見てきた私は、ご本人にお会いして「そのままだ」と思ったのでした。

例えば、代表的な話として、「愛してる」を漱石が「月が綺麗ですね」、二葉亭四迷が「死んでもいいわ」と表現したと言われているように、同じことを言うのに、人によって選ばれる言葉は違います。表現が同じだとしても、句読点も、間も、改行も、ひらがなも、カタカナも、漢字も、どうやって使うかで響きも見た目も変わってくるから不思議。

「おはよ」なのか「おはよ〜」なのか「オハヨー!」なのか「お早う御座います」なのか、そういう、意味は変わらないけれど空気が変わる、ちょっとした違い。どれがいい悪いじゃなくて、洋服みたいに、その人に似合っている言葉ってあるなって。

ということで、突然ですが、サイドトークも終わりです👋(締め方がヘタ)
最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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