#85 憧れの本屋、憧れの読書。
・ここに泊まって読みたい
・最近読んだおすすめ/『ひと』『闇祓』
明日11月7日は、「立冬」です。
なんだかとっても早いように思えますが、見えないところで色々な冬支度が始まっているのかもしれません☃️ パッと咲いたように見えるものほど、裏側でしっかり準備が進んでいる気がします。

今日は、「本や読書にまつわる憧れ」について書いていきたいと思います✍️
本の紹介を読みたい方は読み飛ばして、下の方へどうぞ!
憧れの書店と素敵な女の子
先日、10月27日からスタートした「BOOK MEETS NEXT」という読書推進キャンペーンのオープニングイベントに行ってきました。
イベントの講演に登壇されたのは、『塞王の楯』で直木賞を受賞された歴史作家であり書店も運営する元ダンスインストラクターの(情報が多い笑)今村翔吾さんや、『魔女の宅急便』の原作で知られる作家・角野栄子さんら。

今村翔吾さんは、なんというか、お話がめちゃくちゃ上手で、とても聡明な方なのだなぁという印象を受けました。歴史を扱った作品は好きなので興味はありつつ、まだ作品を読んだことのない作家さんなのですが、こうしてお話を聞いてみると「この方が書く物語なら、とんでもなく面白いのでは...」と思わせられました。
「本は高級路線化に進む?」や「(言葉を選ばずにいうと)作家の数が多すぎる」、「本好きは勝手に本を読むので、読まない人をどう巻き込むかが今後の出版界のキーとなる」みたいな話をされていて、出版界隈の方々もご出席されていたであろう場で、いい意味でギリギリの話をしてくれていた気がします。(配信アーカイブが11/8からのようなので、面白かったのでご興味ある方はぜひ)
一方、角野栄子さんは素敵なピンクのお召し物がとても似合う、キュートな雰囲気を纏った方でした。アーカイブに残るか分からないのですが、私、とっても好きなお話があって、少しだけご紹介させてください🥺
このイベントの開催場所は、紀伊国屋書店の上階にある紀伊國屋ホールでだったのですが、角野さんは学生時代に紀伊國屋書店に足を運んだ理由を、
「紀伊國屋に通うと素敵な女の子になれるような気がして」
と表現されていて、ひとりで席で、うわああああああ!かわいいいいいい!!!ってなっていました。笑。
そこに行ったら素敵な女の子になれるって思えるなんて、最高な場所だなって。
その後、大学を卒業された角野さんは紀伊國屋書店出版部に勤務されたのだそう。それもなんかいいですよね。
ちなみに来年2023年11月に東京・江戸川区に「江戸川区角野栄子児童文学館」が完成するそう。隈研吾建築都市設計事務所さんがご担当とのことで、すでにワクワクがたくさん 🧹

ここに泊まって読みたい。
角野栄子さんの「紀伊國屋に通うと素敵な女の子になれるような気がして」に近い気持ちでいえば、私が「ここ行ったら素敵な大人になれるような気がする」と思うのは、こちら。

長野県・蓼科にある大正15年創業の蓼科新湯温泉。いま、私が一番行きたい憧れの場所です。
蓼科は「一大文学保養地」として、太宰をはじめとするたくさんの文人が集まった場所でもあります。
哲学・科学・史学・社会学の専門書を中心とした学術出版社・みすず書房の本を設た「みすずLounge & Bar」や、文芸・学術・国内外古典的著作を取り扱う岩波書店の岩波文庫が立ち並ぶ「岩波文庫の回廊」はホームページを見ているだけでため息もの。
眺めているだけでしあわせですけれど、ここはできれば近い未来に足を運びたいもの。そう思うと、明日からの仕事を頑張るモチベーションになりそうです💪
もうひとつは、「箱根本箱」。元々は日本出版販売株式会社の保養所だったところをリノベーションして作られたブックホテル。こちらも憧れです。
直近行かれた方のnoteが丁寧なレポで、行きたい欲を掻き立てられます( ⚆ ⚆ )!
私は3冊ほど自分の本を持っていったのだが、結局、1冊も読まなかった。
という理由が印象的でした。

今週のおすすめ本は、小野寺史宣さんの『ひと』。

2019年本屋大賞2位。本屋で平積みされていたのは知っていたし、なんとなくこの表紙に『ひと』というタイトルが印象に残っていました。でも、その時は結局手にしないままでした。
ところが、ひょんなことから人から割と熱心に勧められて、読んでみました。特に、リアルで知り合ったひとからの「推し」は強いと思う最近です。
『ひと』は、子どもの頃に調理師の父を亡くし、更に二十歳の秋に母を亡くし、こころを失いつつあった聖輔が、ひょんなことから働くことになった惣菜屋でさまざまな人に出会い、父の足跡を辿りながら、少しずつ拓いていく物語。
ひとひとりの大事件は、実は大きな社会の中ではちいさい。たくさんいる人の中の、ひとつの人生。サイズ感とか広がりが私たちの暮らしの地続きのような感じで、トーンもいい意味で激情性がなく淡々と落ちついていて、会話文も親しみやすい。結構具体的な地名などが出てくるのでそれもリアル。
『ひと』というタイトルじゃなかったら『日々』とかでもいいくらい、「普通の日々」がすごく大事なことに思わせてくれます。ちょっとしたことを見ていてくれる周りの人たちの登場で救われることの多さを読んで、自分の周りにいてくれる人たちに感謝したくなってしまうような作品でした。
一方で「ひとって怖いな」と思わせられたのが、辻村深月さんの『闇祓』です。

辻村深月さんは、個人的に「正義」や「善意」を描くのがうまい作家さんだと思っています。
「正義」というと「悪をやっつけるヒーロー」として認識してきたけれど、大人になって「正義」や「悪」といったものが「どこから見るか」で変わるのでは? と気づいてから、なかなか使い道の難しい言葉だと感じるようになりました。「正義」を語る時は、自分の立っている場所の表明とセットじゃないと、いろいろな誤解が生じそうだなとも思います。
『闇祓』は、辻村さん初のホラー小説。実際、ちょっと怖かった。でも、一般的な幽霊や怪談的な意味合いじゃなくて、「人間怖い」の方のホラーです。
物語のはじまりは、とある高校でのシーンから。
途中転入が難しい高校に通う優等生の澪は、転校生で周囲と全く馴染まない白石に声をかける。しかし、ジッと見つめてくる、家の場所を訊いてくる、家に帰ったら近くでうろうろしているといった行為に恐怖を覚え、最近付き合い始めた憧れの先輩・神原へ相談する。親身になっていた神原が、ある日...
という1章から、舞台は、おしゃれなデザイナーズ団地、とある中堅食品会社、小学校へと変わっていき、読み進めるにつれて居心地の悪い真実が浮かび上がります。
5つの章から成る物語には、「追い詰められる人」が登場するんですが、不思議なことに「追い詰めている人」がいない、とも言えるんですよね。
だって、追い詰めている人は誰も、そのつもりがないのだから...
ということで、今回はこんなところで👋
少しずつ寒さが増してきますので、温かくして過ごしてくださいね。来週も素敵な1週間を!
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