#54 なぜ、本屋では予定外の本を買うのか。

明るい時間に入った本屋、出る頃には外、真っ暗説。

【目次】
1. 魂の一冊/『また、桜の国で』
2. なぜ、本屋では予定外の本を買うのか。/『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』
Akane 2022.03.13
誰でも

こんばんは!今日は全国的に暖かな日でしたね。皆さんは今週はいかがお過ごしでしたでしょうか? 

私の住む東京の桜の開花予想は3/23頃なのだそうで、狙ったわけではないけれど、今読んでいるのは須賀しのぶさんの『また、桜の国で』という物語です。

須賀しのぶさんは2021年に読んだ『革命前夜』が個人的に大ヒットで、何人もの友達に知ってもらおうと配ったほど。ベルリンの壁崩壊直前の時代に音楽と才能と国家に翻弄される若者たちを描いた作品です。

この『また、桜の国で』もまた、近代史にあたる第二次世界大戦時のドイツに侵攻されるポーランドを舞台にした物語。

ポーランドの日本大使館に着任した日本とロシアのミックスルーツの主人公・慎は、大使館の仲間やかつて日本がシベリアから救出したポーランド戦争孤児たちの団体とともに戦争回避に向け奔走する。しかし、戦争は勃発してしまい...というお話。

緊迫感のある進行はゾクゾクするし、歴史の中で「世界地図から自国の消滅する」経験をしたポーランド国民の複雑な状況や思いが背景知識を知らずに読んだ人でも見入ってしまうほどに描かれています。こんな描写ができる人ってどれだけいるんでしょう...。

数十ページ読んだところで、これはとんでもない数だろうと後ろ側を見たら、案の定、その文献の数の多さ!なんと1冊の本を書くにあたり海外の本や論文も含め、26もありました。

私は読了まであと少し残っているのですが、ものすごい魂の込められた一冊だなと感じています。2021ベスト本に入りそうな予感...!

ちなみに、第156回直木賞候補&第4回高校生直木賞受賞の作品でもあります。(当時、同じく受賞候補になっていたのは恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』や荻原浩さんの『海の見える理髪店』、原田マハさんの『暗幕のゲルニカ』など、錚々たる面々)

***

なぜ、本屋では予定外の本を買うのか。

さて、今日のメインの話題です。

本屋さんに行くと、予定外の本を買って帰るという経験がある方は結構いらっしゃるのではないかと推察しております。まさにある日の私はそんな感じでした。

その日、予定を終えたのはまだ空が明るい時間。かねてから欲しいと思っていた仕事の本を買いに、東京・表参道にある「青山ブックセンター本店」に向かいました。

入り口までは本旗がお迎えしてくれる。

入り口までは本旗がお迎えしてくれる。

本屋の入り口というのは「特集」や「フェア」的なものが多いので、ぐるりと見る。書店員さんのセレクト本棚みたいなのもあって満足度高し。いくつか気になるものがあるものの目的は仕事の本だ、と奥の方へ。

というものの、青山ブックセンターは広いので、結局いろいろなコーナーをふんふんと寄り道しながら見て回っていました。目立つところには、多様性、テクノロジー、健康、環境、ビジネスや働き方...改めて本屋さんは社会と連動しているなと感じさせられます。

仕事の本を探していたはずの私が立ち止まったのは、社会のコーナーにあった一冊の厚いペーパーバックの前。その本のタイトルは、「WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢 × SDGs」。帯の背には「One World in One Book」と書かれていました。

この本は、世界各国の若者の夢が語られた本です。国ごとに書かれていて、無機質な説明ではなく、写真掲載された爽やかな笑顔の彼・彼女たちが、文冒頭にその国の情景を語ってくれています。夢の内容も有り体のものではなく、ごく個人の体験がベースになっているところが興味深いところです。

私は環境やSDGsなどは興味がある方ですが、情報過多で最近少し食傷気味になっていて、どちらかというと今は違うものを摂取したい時期でした。

なのに、なぜタイトルに「SDGs」とついた本が気になったのか。

それはまさに、冒頭に出てきた『また、桜の国で』の影響です。

『また、桜の国で』の舞台はポーランドですが、様々な国の登場人物が出てきます。主人公の慎はロシアと日本のミックスルーツ、慎がポーランドで出会った友人のヤンもユダヤ系ポーランド人、慎たちと協力して戦争を止めようと奔走するシベリアから日本に避難した孤児たちが作った団体のメンバーも、複雑な国の背景を背負って生きています。

個人的に、物語のいいところは、世界史の授業では2行で終わることを600ページかけて描いてくれることだな、と思っています。歴史は歴史として残す権力を持つ人たちがつくることから、「習う歴史は勝者の歴史」になりやすいけれど、物語は、それ以外の側面を掬ってくれる一つの方法かもしれません。

そんな物語を読んでいる途中だったことと、最近の国際社会情勢のことも相まって「国」「ルーツ」というものを考える時間が増えていました。だから、「201カ国」と書かれたタイトルとたくさんの顔が並んだ表紙に直感的に惹かれて手にとったのでした。(国数の定義はいろいろあるのでこの201というのが"全部"とは言い切れないものの)

今、適当に10回ページを開いたら、ニジェール、スリランカ、レソト、グアテマラ、南スーダン、ハンガリー、ブルネイ、コソボ、トリニダード・トバゴ、バチカン市国のページに出会いました。

レソト、初めて聞いた。
ブルネイ、名前は聞いたことあるけれど説明できない。
グアテマラってコーヒーの...(その後続かない)

全然知らない自分にちょっと残念にも思いますが、知る余白の広さにちょっとワクワクしたりもしています。

この本は、前から丁寧に読み解いていく、というよりは適当にパッと開いて「出会う」がよし、もしくは、今気になっている国、話題の国のことを知りたくなったらまず辞書のように「会いにいく」がよし、と思います。行ってみたいけれど今は行けない海の向こうの国を開いてみるのも良いかもしれません。

知らない世界に、知らない国に、誰かの胸の中にあった大きな思いや夢に、なんだか突き動かされる気がして、細かいことはもういっか、って思ったり、身の回りの平和にめちゃくちゃ感謝したり、最近お休みしていた感情が湧き上がるような気がしました。

550ページ近く、重さ0.7kg、2,860円。一般書籍として持って帰るにはちょっと重いし値も張るけれど、これは「手元に置きたい」が勝った本でした。

いろいろ書きましたが、結論、「なぜ、本屋では予定外の本を買うのか」の私なりの答えは、「本屋は、ありとあらゆる "知りたい" に応えてくれる魅力的な可能性を持っているから」です。興味のアンテナをくすぐり、数々の選択肢を出してくれるなんてワンダーランドです。

あとは、本屋に本を買いにいった私たちは、ただただ「本そのものが好き」だから、そこに足を入れた時点でそうなるもんなんです。そういう仕様というか。

いつの間にか買うか買わないかではなくて、どれを買うかに思考がスイッチしている。昔に比べ、足を運ぶことが減ってしまったからこそ、行った時の購入数は増えがちです。

結局、仕事の本に加えて他にも1冊買ったので、総勢1.3キロになりましたが、それもまた楽しい重さですよね🚶‍♀️(筋トレになったかなぁ)


さあ、色々物色していたら、あっという間に真っ暗です。今日も本屋は楽しかった。

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今回はなんだかつらつらと書いてしまってまとまりがなくてごめんなさい!(なんかうまく書けなかった感🥲ですが、あんまりハードル高くしてもあれなので、このまま送り出させて頂きます... )

ということで、今回はこんなところで👋
うららかな春の陽気を来週も楽しみましょう〜!来週も良い1週間になりますように。

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