#13 疲れすぎて読めない夜のために

疲れていると、本って読めませんよね。そんな時に、そっと差し出したい本たちをご紹介。(でも、ま、読めない時は寝ちゃいましょう。)
Akane 2021.05.09
誰でも

ゴールデンウィークも終わり、いつもの日々が戻ってきましたね。いかがお過ごしですか?

私は、試験勉強のために仕事を調整してスローペースに暮らしてきた数ヶ月から一変、久しぶりに追われるように過ごした1週間でした。色々なことが一気に動き出し、新しい仕事もはじまったので、まだ体も心も追いつききっていません😂

せかせかした時は、とりあえず大きな物を見るといい。高い木、空、くも☁️

せかせかした時は、とりあえず大きな物を見るといい。高い木、空、くも☁️

そんな時は不思議なもので、大好きな読書をしていても、文字が頭に入って来なかったり、読んでいる最中に頭の中に仕事がぽわんと浮かび上がったりするんですよね。

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時間ないし、疲れているし、本、読めない。

前にこのレターのアンケートを取らせてもらった時に、「本を読みたいけれど疲れていたり、時間が取れなくて読めない」という方が思いの外、多くいらっしゃいました。

私も今週バタバタとしていて、全然読めませんでした。でも、アンケートに書いてくださった方の気分が重なるように分かって、逆に良かったのかも、と思ったり。

そんなわけで、今回は「疲れすぎて読めない夜のために」と題しまして、ほんの10分、いや、数分でも本の世界に心を委ねられる物語をお届けしていきたいと思います。 

ごほうび、ぜいたく、しあわせ。

まず、こんな時に、とんでもなくぴったりな本があるんですよ。

それは、こちら。「NHK国際放送が選んだ日本の名作」シリーズです。

ちょっとシリーズ名はもっと楽しそうな名前にしておくれ、とつっこみたくなりますが笑、NHKのラジオ番組で世界17言語に翻訳して朗読された小説のなかから、選りすぐりの作品が1冊になった本です。

1日10分のごほうび』『1日10分のぜいたく』『1日10分のしあわせ』の3冊が出ているんですが、少なくとも名前は見たことあるぞ!と思う作家さんの、それこそ10分で読める超短編が揃っています。

『ごほうび』には江國香織さんや、吉本ばななさん、原田マハさん、『ぜいたく』にはあさのあつこさん、小川糸さん、重松清さん、『しあわせ』には小川洋子さん、角田光代さん、宮下奈都さんなど、作家名見ただけで期待膨らむ面々。

1杯のお茶と、お茶が冷めないうちに読み切れる長さの小説。疲れているし、寝てしまう方が早いかもしれないんだけど、ほんのちょっと、忙しい日々の中に入れてみるのも、なしではない気がします😏

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疲れすぎて眠れぬ夜のために

私はとんでもなく睡眠欲が強く、おふとんに入ったら気づかぬ間に落ちていて、目覚ましをかけなければ今でも10時間すやすや寝るような大人です。おかげで身長は170cmを超えています。「寝る子は育つ」はあながち嘘じゃないかも。

そんな、眠れぬ夜のない私だけれど、この本のタイトルはなぜか惹かれるんです。(魅力って、不思議と説明できない、理由がないという方が強かったりしますよね…)

疲れすぎて眠れぬ夜のために』は、神戸の大学で先生をしている内田樹さんの本。いろんな本を出していて、たくさんの当たり前と思い込んでいたことに疑問を投げかけています。内田さんの出す答えに対して、これは同じだなぁ、これは私とは考え方がちょっと違うな、といったことに思考を巡らすと「自分の考えってこんな風だったのか」という発見に繋がるので「自分て流されやすいかな」なんて思う方にもオススメ。


内田さんはたくさんの本を出していますが、その中でも、『困難な成熟』と並んで好きな本が、これです。

『困難な成熟』も、この『疲れすぎて眠れぬ夜のために』も、私は「健康の本」だと思っています。実際のカテゴリーは人文・思想になるんだろうけど、個人的には「気持ちの健康本」です。 

気持ちを健やかにしてくれるといえば、同世代や憧れの女性が書くエッセイが鉄板と勝手に思っておりますが(私は、よしもとばななさんの「すばらしい日々」や、石田ゆり子さんの「Lily」は大好き)、内田さんは1950年生まれなので御歳71歳。おじいちゃんです。

このふたつは、生活の近いところに置いておきたい。偶然にも、タイトルに共に「日々」が入っている

このふたつは、生活の近いところに置いておきたい。偶然にも、タイトルに共に「日々」が入っている

そのおじいちゃんが、18年前に書いた本がこの『疲れすぎて眠れぬ夜のために』なんですけども(当時はおじちゃん)、いろんな意味で肩の力が抜けるんです、これを読むと。共感、というより「思い出し」に近いですかね。

例えば、「我慢がからだに悪い」なんて直観的にみんな知ってるはず。なのに、しちゃう。「具合が悪いので失礼します」ってなかなか言えない。とか。でも、これを読んだ後は、「あ、そうだそうだ、言っていいんだ本当は」って思うんです。

なんとなく言語化できなかったものが、わかるように言葉になっている。それがこの本の面白いところです。そして、大学の先生が書いているから小難しいんじゃないかと思うじゃないですか。そういう内田さんの本もあるんですが、これは、そんなことなくて。 

私、この本の中で好きな表現があるんです。

人間同士の親しみや敬意というのは、もっと「ほわん」とした感じのものだとぼくは思います。
『疲れすぎて眠れぬ夜のために』内田樹 p.241

大学の先生が、「ほわん」を使ってくるとは思っていなかったのですが、この「ほわん」、説明していないようでめちゃくちゃ説明していると私は感じたのです。これが、疲れすぎても読める本の正体なのかもしれません。

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10分もしんどい!ならば1分!

とはいえ、もうダメだぁーーーあーーー、10分だってきついーーーー、なんて時もあります。そんな時に、でもちょっとだけ言葉に触れたい。そう思ったら、「パッと開く系」です。

「パッと開く系」は1ページに1メッセージ書かれた本。適当に開いてその一文だけ楽しんで終わりにします。その言葉が響けばラッキーだし、なんとも思わなくても、そんな時もあるさ、と流して。

忙しいときは、自分のことが後回しになりがちなので、「私は私のままで生きることにした」なんていいのかなと思います。

適度なページの余白とイラストも入っていて、読みやすいです。タイトル通り「わたし」に寄り添っているので、「くらし」に寄り添うものの方が好みだったら、「100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート」なんかもいいかも。

それから、歌集もオススメ。かなりオススメです。

制限のある中での表現は、自然と研ぎ澄まされていきます。というか、研ぎ澄ませないと前に出てこれないというか。なので、1行で目が醒めるような思いをすることも。ある意味、怖い書物でもあります。

短歌はなんとなく、百人一首や万葉集、古今和歌集など昔のものが想像されますが、現代歌集は思った以上に超超超短編の色を感じます。

工藤吉生さんの『世界で一番すばらしい俺』、萩原慎一郎さんの『歌集 滑走路』(ちなみに滑走路は水川あさみさん主演で2020年映画化もしています)は、細かい説明はせずに開いてもらった方がいいかもしれません。なんせ、私の説明よりも圧倒的に短く感じることができるので。 

本のいいところは、人生であんまり交わることのない人たちと、時間を超えて、時間を選ばず、自分のペースで、しかも安価で出会えること。

結局いろいろ紹介したんですが、時間を選ばず、というのも大きな特徴なので、読めない時は読めないで、それでいいのかなって思います。

本は逃げませんし、待っててくれますから✌️


 それでは、今回はこんなところで👋 

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次回は、これまで頂いたリクエストに合う本をご紹介する回にする予定です!(もし追加リクエストがあれば今回のメッセージからもぜひお待ちしています)

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