#76 ふたりは友だち。

・売れた友だち、売れなかったぼく /『ピンクとグレー』
・死にたい友だち、死なせないぼく / 『死にゆく者の祈り』
Akane 2022.08.28
誰でも

8月も残すところあと数日となりました。少しずつ空気が涼しくなって、季節がちゃんと進んでいるなと感じるこの頃ですが、いかがお過ごしですか?

私は今週、仕事の打ち合わせや、お友達との待ち合わせの前に1時間ほど早めに街について、喫茶読書をすることが多かったのですが、なんというか、意外と決められた時間の中で読むって楽しいなと思いました。

次があるから時間がきたら本を閉じるのですが、「あとちょっとぉぉぉ」と芽生える気持ちが、続きをより楽しみにさせてくれるんですよね✌️ 喫茶読書にはまっているというより、続きを焦がれる気持ちにはまっているのかもしれません。

さて、今週は大人の友情物語をご紹介します。といっても、思っている友情物語とはちょっと違うかもしれません...

ゆるやかな本のおしゃべりに、どうぞお付き合いくださいませ🙏

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図書館で借りてきたのは、加藤シゲアキさんの『ピンクとグレー』

加藤さんといえば、直木賞候補に吉川英治文学新人賞受賞作品となった『オルタネート』も記憶に新しいですね。今年で作家生活10周年。えっ。そんなに長いの!?とちょっとびっくりしました。

本業アイドルとして活動されているのは知っていて、この作品は芸能界が舞台ということで、その世界にいる人だからこそ描ける風景が見られそうな気がして手に取りました。

『ピンクとグレー』は、こどもの頃に出会った二人の少年が成長し、共に読者モデルをきかっけに芸能界に足を踏み入れたが、その後、ひとりだけが世間から注目を浴びていく中で変わる関係性や、それぞれの視点から見ていた景色を描いた物語。

一人だけが売れていったことで関係性がこじれていく様子やそれぞれの葛藤などは、よく見かける流れかもしれないけれど、私は想像以上に面白く読みました。

その面白さを引っ張ったのは、描かれている芸能の世界の描写だったような気がします。「ドラマの衣装合わせ」や「速着替えのコツ」みたいな慣習的なものから、「売れる友人に嫉妬を抱き、社会からは芸能人だと羨望を向けられる」が逆の思いが同時並行で起きる立場としての複雑さ。これって芸能界に身を置いている加藤さんだからこそ書けることだな、と。

でも、本当に面白かった意味が分かったのは、あとがきのあとの加藤さんのインタビューを読んだ時でした。

『ピンクとグレー』は赤裸々じゃないんです。リアルではない。あくまでもリアリティです。
ーあくまで物語を面白くするために、ですね。
『ピンクとグレー』p.312


知らない世界を知るのは具体的なほど面白いと思っていた私は、この本は、エンターテイメントであることを意識して、あくまでどうやって楽しませるかという視点で書かれていたのだな、と気づいていい意味で騙された気分になり嬉しくなりました。


ちなみに、私は加藤さんのお名前を見たときに、ふと疑問が湧いたんです。「ジャニーズさんって皆さん本名のイメージがあるけれど、カタカナでシゲアキは珍しいな」と。

調べてみると、この『ピンクとグレー』で作家デビューするにあたり改名をされたのだとか。でも、本業アイドルの方が作家になるにあたり改名ってすごくないですか...。それが、この本を出すときに「この先も作家として生きていくよ」という宣言にも思えてなんだか熱くなります🔥

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冒頭で「決められた時間の中で読むのは楽しい」という話をしたばかりなので、これを書くのは憚られるのですが...

今週の「誘惑に負けました本」は、中山七里さんの『死にゆく者の祈り』でした。

その日は、幸い(?)にも、急ぎの仕事も打ち合わせなどもなく、締切に余裕のある仕事を黙々とやる作業日。朝読書として、この本をパラッと始めたらもう止まらなくなってしまい、「あとちょっと」と繰り返し結果、読み切るまで読んでいました。。。

結局、日中に仕事ができずに夜に仕事をすることになったのですが、誘惑には勝てなかったことに後悔はないです...!( ※ 私はフリーランスなので規定の勤務時間をサボって読んでいるわけではないのでご安心を😌 )

『死にゆく者の祈り』は、『ピンクとグレー』に続き、大学時代に強い絆を結んだ友人同士の二人の、駆け引きと救いのお話です。長い年月を経て、ひとりは受刑者に対して精神的救済や道徳心を諭す「教誨師(きょうかいし)」として、」もうひとりは死刑囚として、刑務所で再会するところから物語が始まります。

もう、設定の時点で心くすぐるものがありますね。初めて知る「教誨師」という職業をめぐる宗教の世界に、「教誨師」という職業と「いち友人」の自分の間で揺れ動く主人公、そして、死刑囚の友人が本当に犯した罪とは...?


見せ場に向かって階段をひとつひとつ上がっていく感じにドキドキさせられて、「このあとどうなるの?」と目が離せない。階段ははじめは一段一段が大きくてゆっくり少しずつ上がっていくのに、最後は小刻みに走るように進んでいくスピード感の変化も相まって手も止められなくなってしまいます。

舞台が舞台なので、なかなか気の張るような描写や緊張感に包まれますが、孤軍奮闘からはじまった教誨師の独自調査に、少しずつ手を貸す仲間たちによって少しずつ明かされていく謎に思いっきり浸ってみるのもいいかもしれません...!

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気になったニュースはこちら。「会員制図書施設」とは...!

こちらの様子とはちょっと違うのだけれど、小規模な会員制図書施設のような、サードプレイス的な場所を作るの、憧れますね。(人生長いから、いつかの目標にするぞ。遊びに来てくださいね ← 気が早い)

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ということで、今回はこんなところで👋
8月もお疲れ様でした!今年も残すところ4ヶ月...あと、なにをして楽しみましょうかね( ⚆ ⚆ )?

次の季節も心身健やかに過ごせることを願って🙏

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