#19 デビュー作は、全身全霊全部入り。

「作家になるか」を賭けた全身全霊、魂の作品。それがデビュー作。ということで、今回はとっておきのデビュー作3冊を。
Akane 2021.06.20
誰でも

4月の新学期、新年度から3ヶ月が経とうとしています。今年ももう半分が経とうとしているなんて、早いですねぇ。

無農薬の梅をお届けしてもらったので、初の梅仕事しました。

無農薬の梅をお届けしてもらったので、初の梅仕事しました。

私は今、社会人3ヶ月目の新人さんと仕事でバディを組んでいます。大人になると、いろんな意味で、抜くところ・入れるところを覚えてきますが、彼は全部全力で、見ていて眩しくて、気が引き締まる気持ちがするのでした。

そんな訳で、今回は作家さんのおすすめデビュー作を3冊ご紹介していきます!(+おまけ:伊坂幸太郎さんの売れなかったデビュー後の"運命"な話も少々) 

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完成してなくてもいいじゃない

新人賞は、口コミとかで結構辛口コメントを見かけることもあるんですが、個人的には、新人賞作品への期待値は好きな作家さんを読むのとは、ちょっと違って、全体の完成度よりも、一瞬の煌めきや作者の方の姿が浮かび上がるような感じを求めていたりします。

デビュー作や新人賞の作品って、その人個人の性質が全身全霊、色濃く反映されているような気がするのです。「ここを通らないと、作品は世に出ないんだ」っていう、ある意味、自分が自分にかける脅迫に近い感覚もありそう。

ということで、オススメはこの3冊。 

一冊ずつまいりましょう🚶‍♀️

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学生女子の既視感、全部入り。

柚木麻子さんは学生の女の子を描かせたら、もう「え、そこにいて見てたんですか?」ってくらいの筆力を見せる作家さん。そんな柚木麻子さんは、『ふがいない僕は空を見た』の窪美澄さんや『桐島、部活やめるってよ』の朝井リョウさんと同時期デビュー。お二方の作品はともに映画化されて認知が高いものの、私の一押しはこっちなんですよ!

新人賞シリーズの中で、もうとにかく、これは読んでほしいのです。後悔させませんから。

終点のあの子』は柚木さんのデビュー作、『フォーゲットミー、ノットブルー』を含む短編集。学校独特の空気感、高校生特有の自意識、「みんなとは違う自分、でも、みんなと同じでもいたい」という相反する気持ち、ちょっとしたことで崩れる均衡。

私ももちろん通ってきたはずなんだけど、改めて、すごい難易度の高い世界だよなあ、と思いました。その繊細さみたいなものは、結構鋭利な刃物だし、一方でほんとに水みたいな何にでも染まれる透明さと瑞々しさみたいなものがあって、キラキラとしているようにも感じます。こういう言語化の難しい「空気」を、わざとらしさ無しに、なめらかに描けちゃうのが魅力な一冊。

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低反発まくらな優しさ、全部入り。

卵の緒』は瀬尾まいこさんのデビュー作。瀬尾さんは「坊ちゃん文学賞」という短編文学賞からデビュー。当時は学校の先生でした。最近読んだ、親が何度も変わる主人公と、その親たちとを描いた『そして、バトンは渡された』(この秋映画化!)も、もう飲み込むように読みました。なんでこんなにスルスル入って来ちゃうんだろうって。瀬尾さんは、なんか低反発まくらっていうか、包み込む感じの文章が心地よいのです。

『卵の緒』も血の繋がらない親子の物語。瀬尾さんは家族の物語をたくさん書いていて、どれも違って面白いのですが、やっぱりはじめに読みたいのは、この本です。瀬尾さんの作品が気になっているものの、まだ読んだことなくて…という方は是非ここから!

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不思議な世界観、9個入り。

お次は、結構評価が割れた、小島達矢さんの『ベンハムの独楽(コマ)』。この本は9つの連作短編集。(でも、割れる作品っていうのは逆に解釈の余地が広いということかも)

私は、「まばたきで入れ替わる双子」「5分後の未来が見える男を騙す」などの変わった世界観が興味深くて好きでした。

「ベンハムの独楽」とは、一般的に白黒の模様なのに回すと色づいて見えるという不思議な道具コマで、本書は、そのタイトルの通り「見る人によって見え方が違う」から評価が分かれるのかもしれませんねぇ🤔直近の単行本出版はここ数年ないことが、ちょっともったいないような気もしちゃいます。

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おまけ:デビューは売れなかったけれど...

伊坂幸太郎さんは作家生活20周年を迎えています。20年小説家で、しかも第一線でいられるのってすごいですよね。伊坂さんは2000年に『オーデュボンの祈り』でデビュー。当時はシステムエンジニア(私と同じだわ)として働きながら執筆されていました。

今でこそ評価される『オーデュボンの祈り』や『ラッシュライフ』は、実は当時あまり売れなかったのだそう。そんな時に、ミュージシャンの斉藤和義さんの曲を聴いて「いいものを作るためにはすべてを賭けなければ」と思い至り、翌日に会社に退職届を出したのでした(!)。

半年間執筆に専念した伊坂さんは『重力ピエロ』、『陽気なギャングが地球を回す』で大ヒットを出します。さらに、その後、まさかの斉藤和義さんから作詞のオファーをもらうのだから、なんだか運命な感じもしますよね。(もちろん斉藤さんは伊坂さんが斉藤さんの曲を聴いて専業作家になることを決めたことは知りません)

その後のご活躍はご存知の通り、もちろん最新作の『逆ソクラテス』も絶品です😏✨

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ということで、今回はこんなところで👋

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