#51 作品外で裏切る作家たち(いい意味)

作品が面白くて、調べてみたら驚いた。

【目次】
・本と出会うための本屋で読んできた話/『さんかく』
・2人だった/『昨夜のカレー、明日のパン』『99%の誘拐』
・性別違った/『イニシエーション・ラブ』『レインツリーの国』
Akane 2022.02.20
誰でも

本と出会うための本屋で読んできた話

先日、六本木にある「本と出会うための本屋。文喫」に行ってきました。(有料図書館のような本屋さんです)

本を読む友達と、たまに足を運びます。それぞれ自由に本を読むだけという遊びなので、誘える人は限られてしまうのですが、感想戦(?)も含めていい時間です。

この日、私が読んでいたのは千早茜さんの『さんかく』

京都の広い町家でひとり暮らしをしている夕香の家に、昔のアルバイトの同僚で食の趣味が合う年下の後輩・伊東くんが引っ越してくることに。男女の関係というより、食事を楽しむふたり。夕香には離れられない難しい関係の人がいるし、伊東くんにも動物の研究に熱心な研究者の彼女・華がいる、というハタから見たらおかしな状態。それでも、一緒に食事をしていると湧いてくる愛着が奇妙な三角関係を作り出し...というお話。

食卓の時間の居心地がよくなって、なんとなく後ろめたい気持ちに気づかないふりをしたい二人の食卓を、私たち読者はなんだか不思議な気分で見届けるのですが、出てくる食事がまぁ美味しそうなこと。こんなに丁寧に描かれたら、住みたくなっちゃいます、夕香さん家。(ちなみに、千早茜さんのTwitterは食ネタが多くて見ていて面白い。インスタはパフェ)

読書は究極に個人的な趣味だけれど、一人でできるはずの読書を、誰かとするっていうことの意味を、私は結構感じています。(だから読書イベントをやっているのかも)

図書館や文喫のような場所では、本を返却する棚があると思いますが、私のおすすめは、この返却場所から読む本を選ぶことです。勝手に選書された気分になれます。


さて、今回のテーマは『作品外で裏切る作家たち(いいやつ)』にしました。今週も、ゆるゆるとどうぞ...😌

***

2人だった。

『さんかく』は「同居」と「ごはん」が大事な要素としてあった物語ですが、また違った不思議な「同居」と「ごはん」といえば、木皿泉さんの『昨夜のカレー、明日のパン』じゃないでしょうか。

『昨夜のカレー、明日のパン』は、普通の日のしあわせを思い出させてくれる物語。なんていうか、今、持っているものに気づいて取り戻していく本なのかも。

主人公のテツコは結婚してすぐに夫・一樹が亡くなり、一樹の父であるギフ(義父)と暮らしている。このテツコとギフ、そして彼女たちの周りのひとたちが一樹を失った悲しみから少しずつ抜け出していく様子を描いた連作短編です。

物語はシリアスというよりはラフな感じで、淡々と進んでいきます。最初は一風変わった設定にハマれるか心配になっていたのに、いつの間にか世界観に惹き込まれて...という人が多い印象。(私もそうだった)脇を固める登場人物たちが面白いのがポイントです。

ちなみに、この本は第19回が絶賛選考中の本屋大賞の第11回で2位の作品でした。

ところで、ご存じの方もいるかもしれませんが、木皿泉さんは、和泉 務さんと妻鹿 年季子さんの夫婦作家コンビのペンネームです。この名前はもともと夫の和泉さんが使っていたもので「キザな和泉」からきているんだとか。

同じように二人で書いていた作家さんといえば、井上泉(井上夢人)さんと徳山諄一さんから成る、岡嶋二人さん。(コンビは1989年に解消。徳山さんは惜しまれながら2021年にご逝去されました)

少し前の本ではありますが、『99%の誘拐』は未解決の誘拐事件をきっかけに、新たな誘拐事件が起きる完全犯罪ミステリー。

犯人ははじめから分かっているスタイルなのがちょっと変わっていて、逆に緻密な犯罪計画がぐいぐい引っ張っていって最後まで一気読み。書かれたのが1988年ということを考えると、すごいの一言かもしれません...(文字数の都合上さっくりの紹介ですが、ミステリー好きな方には読んでほしい一作)

***

性別違った。

と言えば、『イニシエーション・ラブ』が有名な乾くるみさんです。

(ご紹介にあたり読み返そうと思ったら手持ちの本が行方不明になっていました...)

(ご紹介にあたり読み返そうと思ったら手持ちの本が行方不明になっていました...)

「最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。必ず2回読みたくなる!」というキャッチコピーに惹かれて手を取った方もいるのではないでしょうか。(そうして私は二度読んだ)

2004年に刊行されてから芸人さんがテレビで紹介したり、時間が経ってから映画化されたりと度々話題になり、「二度売れ」ならぬ「複数回売れ」を経て10年かけて100万部となった作品です。

ピンクの表紙にラブと入ったタイトル、ひらがなの「くるみ」が並んで、その印象でてっきり女性かと思っていたら男性でした。

乾くるみさんは大学卒業後はIT企業に就職して、システム開発をやっていた傍ら小説を書き続け、第4回メフィスト賞でデビュー。技術者として働きながら執筆というと、東野圭吾さんや伊坂幸太郎さんなんかもそうですね。

ちなみに女性のようなペンネームを選んだ理由は知り合いに小説を書いていることを絶対に知られたくなかったからだそうですが、売れた結果、みんなに知られることになるという、嬉しさと焦りが入り混じることに😅


逆に、男性っぽい名前と思っていたら女性だったというのが『図書館戦争』や『三匹のおっさん』などシリーズものでも人気の有川ひろさんです。

有川さんの作品で私が好きなのは『レインツリーの国』。図書館戦争シリーズとも繋がっています。

好きな本をきっかけに、ネット上で出会った伸行と利香。メールでやり取りを重ねるうちに、お互いに実際に会いたい気持ちが湧いてくるものの、利香には会えない理由があって…という話。

あれ、有川浩では?と思っていた方がいたら、鋭いです。

有川ひろさんは元々、「有川浩」名義で活動していましたが、2019年から有川ひろ名義に改名されています。

有川ひろと覚しき人
@arikawahiro0609
浩→ひろに改名の理由、「最初男の人かと思ってた」と言われるのにもう飽きたのもある。
もう何百回か聞いているので「実は…」の態で来られるとリアクション取るのがそろそろつらい。
「なぜ男性名に?」も別に男性名にしたつもりがないので話が広がらなくてつらい。
2019/11/11 13:24
91Retweet 829Likes

(経緯は産経WEBの「有川ひろのエンタメあれこれ」にも書かれていましたのでご興味があればどうぞ!)

この「浩」という漢字が『海の見える理髪店』などで知られる萩原浩さんの印象もあって男性っぽさを感じていたのかもしれません。

その他だと、私は、『君の膵臓をたべたい』で知られる住野よるさんも、その表紙の雰囲気やひらがなの名前から女性と思っていたら男性だったり、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の桜庭一樹さんも男性と思ったら女性だったり、ちょっと思い込んでいたところがありました。


色々書いてきたのですが、何人で書いていても、性別がどちらでも、わたしたちにワクワクやドキドキを届けてくれる作家さんに改めてありがたいと思いました。最近は、一気に読みたい本が届いたので、早く読んで面白いものをシェアしたい気持ちでいっぱいです☺️


それでは、今回はこんなところで👋

来週終わったらもう3月になるんですね。まだまだ寒いですが、春が待ち遠しいです。季節の変わり目も近いので、どうぞお気をつけてお過ごしください!

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