#10 敵はどこ? 味方は誰だ?
今日4/18は、私にとってはかねてより勉強をしてきた、とある国家試験を受けに行ってきましたが、みなさんはどんな週末を過ごされましたか?👀
結果は分かりませんが、しばらく頑張ってきたので、溜まりに溜まった読書や映画やアニメ欲を爆発させたり、仕事場の近所に見つけた古道具屋さんや開店ばかりの本屋さんに足を運んだりしてきます。
職場の近所のドイツ古道具屋さん。掘り出しものがありそう感。
試験を受けるのは誰に言われたわけでもなく、自分で決めたことですが、とりあえず試験終了までペンを持っていた自分に「お疲れ様でした」と言ってあげようと思います😏
期間限定でちょっと高めのハードルを自分に設定するのも、案外悪くないものです。
むむむと詰め込んだ日々を、ご機嫌な毎日を変換したいな思って、田辺聖子さんの『上機嫌な言葉 366日』を読み始めました。
表紙裏のピンクが春っぽい🌸でも、あとから出た文庫の装丁がかわいい。
この本では、毎日ひとことずつ、田辺さんの愛とユーモアと発見溢れるひとことが載っています。寝る前、出かける前に、パッと開いて心に止めると多分ご機嫌な1日に。
ちなみに明日4/19にはこんなことが書いてありました。
いい友達を持ってる、というのが、人間のいちばんのお手柄や、思うわ。
敵はどこ?味方は誰だ?
私は二人姉妹の妹なんですが、姉は某有名美大出で、子どもの頃から絵がうまく(そしてコミュ力も高い)、親戚が集まるとその力を遺憾無く発揮し、一方なんもできない私はスッとリビングを抜けて、祖母の部屋で『名探偵コナン』を見てました。おかげでコナンは詳しい。
結果が出せるときは、大抵「時間をかけて量を積み重ねて運も重なっていい感じに仕上がった」というタイプなので、持ち前の才能で解決できる人に憧れがあります。正直、うらやましいです🙄
そんな才能が文字の上でひしめき合うのは、須賀しのぶさんの『革命前夜』。もしかしたら、今年に入って読んだ本の中で、一番夢中になって読んだ本かもしれません。(ちなみに話逸れますが「ひしめき合う」の漢字って「犇めき合う」なの、面白い)
第一印象は、「タイトルの響きがカッコイイな」でした。
『革命前夜』の舞台はベルリンの壁崩壊直前の冷戦下の東ドイツ。日本だとバブル期にあたるのかな。ピアノに打ち込むために東ドイル・ドレスデンにある音楽大学に留学したシュウは天才たちと出会います。
1人目は、どんな曲でもその曲を正確に感じ取り、軽々とやってのけ圧倒するヴァイオリニスト、イェンツ(そして、誰もがその紳士な気質にも憧れる)。
2人目は、奔放で自由な解釈で誰も彼も驚かせていく、個性派のヴァイオリニストのヴェンツェル(しかし、気まぐれで激しい気性なので一緒に組んだ伴奏ピアニストたちは潰れていく)。
そして、3人目は、自分の音を探しにもがくシュウが教会で出会った、謎の美しいオルガン奏者のクリスタ。
当時のドイツは、その歴史的背景から、とんでもない監視社会。でも、誰が「監視する者」で誰が「監視される者」かも分からないんです。「普通のひと」として散らばった「監視する者」の存在。これがこの物語において面白さを増幅させています。
誰が味方で誰が敵なのかがずっと分からなくて、読んでいる自分自身がシュウの気持ちになって、疑心暗鬼になってしまいそうになります🙄でも、一冊の本で、文字だけで、こんなにも振り回してくれる本もなかなかないと思います。
どんでん返しが5回くらい来るので、良い意味で気持ちが大変。もうなんか、映画です。これは映画です。ってくらい、臨場感にあふれ、心臓がちゃんと震えます。
歴史的背景が色濃い舞台なので、冒頭は少し馴染みがないかもしれないけれど(でも、ベルリンの壁崩壊までの歴史は知っておきたい史実でもあって、どうせならこういったハマらせてくれる小説の中で知るのもアリです)、半分まで読み進めたら、あとはもう手放せない。私は寝る間を惜しんで読みました。
読むときは、後ろの時間に気をつけてくださいね😏
天才たちが引き受けたもの
「孤独は天才の学校だ」と言ったのはイギリスの歴史家のエドワード・ギボンです。(関係ないけれど、とっても面白い漫画『鋼の錬金術師』の主人公もエドワード兄弟)
川端康成の場合は、望まぬ孤独だっただろうけれど、その孤独で長い時間が、川端康成の文の才能を開花させたというのは、想像するに十分な材料という気がします。ただ、この孤独は、物理的な孤独というより、心理的な孤独というのがわたしの推測です。
『革命前夜』に出てくる天才ヴァイオリニストのヴェンツェル(気まぐれな個性派な方の天才)は、音を求めすぎる故に多くの伴奏者たちを振り回していきます。それを知りながらも、伴奏者たちはヴェンツェルと組んでしまうのです。すごすぎるものは、目の前にあると触れたくなってしまうのかもしれません。
ヴェンツェルはある晩、襲われて左手が動かなくなってしまう重傷を負います。ヴァイオリニストとしてもう立つことができない状態になった彼は、見舞いにきたシュウに向かってこう言います。
「これが、俺が今までしてきたことの結果ならば、受け入れよう。俺は、他人の気持ちなど考えことはない。興味があるのは、そいつの音だけだ。いいと思えば、片端から食い散らかしてきた。今更改心するつもりもないが、生きているだけで御の字だ。(略)自分の音を貫くってことは、結局はこういうことだ」
ちなみに、ヴァイオリニストから降りることを強いられたヴェンツェルが次に目指したものがまた、面白いんです。(うあああーってなりました)
才能は、人も自分も苦しめるときがあるけれど、それでも、才能が放つ底知れぬ面白さに、本人は手を放せないし、周りは目を離せないんだろうな。
文字数の関係で紹介できないのですが、同じように悲しいくらいにのめり込んでいく天才数学者を描いた、岩井圭也さんの『永遠についての証明』という小説もイチオシです!こっちは、なんか割れそうなガラスがイメージと重なる儚い系です。
私の積読
本棚は人生の履歴書と言っても差し支えないのではないだろうかと思います。自分の本棚にどんな本が置かれているのかをじっくり見られると、なんだか自分の中を見られているような気がしてちょっとドキドキします。
これれは試験後に読もうと思った積読たちです。面白いものがあったら今後のレターでご紹介しますね🎉
『本屋になりたい』『わたしのブックストア』は、いつかちいさな本屋をやってみたいと妄想していて、日本のちいさな本屋さんを調べていたので選びました。『読書会入門』は、これまた読書会を企画していて、そのための準備です。
『「好き嫌い」と才能』は働く人の対談集なのですが、『革命前夜』で"才能"について色々と考えたので現実世界の本も読んでみようと買いました。
『獣の奏者』は、『鹿の王』という小説がめちゃくちゃ良くて、この上橋菜穂子さんシリーズは読破したくなり、試験後一番初めに読みたい小説。『青が破れる』は、2019年の芥川賞作家のデビュー作です。私、最新作よりもデビュー作を読むのが好きなんです。
『熊の敷石』は淡路島に行った時に出会ったカフェの本棚にありました。私が著者の堀江敏幸さんが好きだと伝えると、なんと貸してくれました。本は人をつなぐなと思った瞬間。もちろん、ちゃんと返しにいきます😏
それでは、今回はこんなところで👋
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